making of ふくろう時計

工房スタート以来、今も森の樹の定番である「ふくろうの時計」。

そもそもは、製材所で出る端材をうまく使えないか、というところからのスタートです。

ちゃんとした板材を買うお金がなかった、ということでもあるわけですが、「もったいない」という精神は、今でも我が工房の基本ポリシーです。


HP開設を記念して、ふくろう時計の工程を一挙大公開!

「なんだ簡単ジャン」から「ほーけっこう大変なんだな」まで、皆さんのご感想はいかに?!

1. 材料の皮付き板材

丸太を製材した時にでる一番端っこの部分です。
板としては使いにくいし、変形も大きいので、

木工の材料ではなく、焼き物の窯の燃料などに使われています。
よく使う材は、クスノキ、センダン、ハンノキ、琉球松などです。

2. 皮むき

 
写真はセンダンの皮剥きの様子。
虫除けと、キレイな乾燥のため、生の内に皮を剥いておきます。
センダンの皮は、するすると剥けるので、「気持ちいい!」というレミコさん。

 

3. 皮むき2

 

でも、ちょっと油断していて、皮むきの時期が遅れると、写真のようにカビとシミが入ってしまいます。悲しい・・・。

4. 小枝

ふくろうの止まり木に使う小枝。「枝なんてただなんでしょ」というあなた、違います。「枝欲しい?」という電話を受けると、車をとばしてのこぎり片手にどこへでも。枝の小枝を枝打ちして、大きさを揃えて運ぶだけでも結構重労働。使える枝は、イジュ、クス、イスノキ、モッコクなどなど。針葉樹は油が多すぎて使えません。

5. 小枝の皮むき

 

さてさて、この小枝もできるだけ生のうちに皮を剥いておきます。小枝は軟らかいので、放っておくとあっという間に虫だらけになります。でも、これも重労働。手の皮がムケテ大変です。レミコさんや、息子の仕事(アルバイト)です。

 

以上、下準備でした。

6. 墨付け

 

やっとここから工作のスタートです。寸法に合わせて乾燥の終った板を切ります。あとは板の様子を見ながら(表皮なのでデコボコです)。チョークでアウトラインを書きます。裏面(平面)から型を使って墨付けすれば規格が揃うのですが、それではつまらないので、基本的にフリーハンドです。

 

7. バンドソーで回し挽き

 

チョークの線にそってバンドソー(帯ノコ)で切り抜いていきます。

 

8. ジグソーで微調整

 

細かいカーブは、再度ジグソーで型を整えます。以前は、すべてジグソーでくりぬいていました。

 

9.中身の墨付け

 

形をくりぬくと、目の位置、文字盤をくりぬくお腹、尾羽の位置を済み付けします。

 

10. ボール盤で粗彫り

 

効率と機械(次項)の負担軽減のため、ボール盤でざっと粗彫りします。

 

11. えぐりカッター

 

ディスクグラインダーにチェンソーの刃と同じ構造のカッターを取り付けます。

写真のカッターは、もう限界。切れ味が落ちて焦げ付き始めました(やはりチェンソーと同じで刃は研いで使います)。

12. カービング

 

チェンソーカービングの小型版。

両手でしっかりとコントロールします。油断すると大怪我に。

削りカスは、四方八方に飛び散ります。なぜかパンツの中までしっかりと入ってきます。カスまみれ。

 

13. 文字盤の墨付け

 

型紙に合わせて、粗彫りしたお腹に文字盤の位置を墨つけ。千枚通しを使っています。

14. 文字盤の穴あけ

 

ふくろうの時計の文字盤は、基本的にダボ埋めと木球を使用していますので、ドリルで穴あけします。ただし、お腹は掘り込んでカーブがついていますので、穴も角度をつけながらひとつひとつ開けます。油断すると、穴の位置が微妙にずれてしまいます。

 

15. ムーブメントの取り付け穴

 

背面に時計のムーブメント(機械)を取り付ける穴をあけます。

型に合わせてトリマーで彫っていきます。

この前に、ボール盤を使って下彫りをしておきます。

16. サンディング -その1-

 

ここでのサンディングは、ディスクサンダーを使用して、カービングとサンディングの中間のような作業。30番から80番の、形も違うディスクを順番に使いながら、形を整えていきます。またまた、粉だらけですが、形が出てくるので結構楽しい作業です。

17. 彫刻 -その1-

 

写真がはっきりしませんが、ここまでくると「ああ、ふくろうの時計を作っているのね」と分かるくらいにはなっています。
ここからは、丸ノミと彫刻刃を使って眼と尾羽根を彫っていきます。

18. 彫刻 -その2-

 

大き目の木槌を使って、スコーン、スコーンと彫っていきます。
クスノキは軟らかくて彫りやすいのですが、木目が巻いているので、時々両逆目が出て苦労します。

 

19. 彫刻 -その3-

 

このクスノキみたいにキレイに彫れると気持ちイイですよ。
センダンはノミが使いづらい木なので、ちょっと気合と根性で。

まあ、要は刃の研ぎなんですがね・・・。

 

20. 彫刻 -その4-

 

目は彫刻刃を使ってゆっくりと彫っていきます。

これはお眠りタイプなので、小丸刃と、平刃の代わりに3分ノミを使って形を作ります。

 

21. 彫刻 -その5-

 

これは3分ノミでまぶたの丸みをつけているところ。

ちょっと写真がみにくいですが。

平刃を使わないでノミを使うのは、研ぎの都合です。

 

22. 平面出し

 

背面は平面が好ましいので、手押しカンナ機を使って削ります。
唯一、大型機械を使う工程かな。

23. サンディング -その2-

 

仕上げのサンディングを行います。ここでは「削る」よりは「磨く」という作業。

80番から240番までペーパーの番手を上げていきます。

またまた、粉だらけ。僕は嫌いな作業です。

 

 

24. 着色

 

本体の着色を行います。

(もちろん着色しない作り方もあります。板の質や、お客様からの要望等で決まります。)
着色剤は、基本的に市販のオイルステンを使用しています。

 

25. 止まり木の作成

 

着色の乾燥を待っている間、今度は止まり木を作ります。

皮むきして乾燥した小枝を適当な長さに切り、もう一度小刀できれいに削っていきます。

槍鉋みたいな感じで、ちょっと楽しい作業です。

 

26. クチバシの作成 -その1-

 

クチバシは、本体からの削りだしではなく、外付けで作っています。

クスノキの角材を作り、写真のようにクチバシの形を小刀で削り出していきます。

 

27. クチバシの作成 -その2-

 

形が出来たら、のこぎりで切り離し、ノミでもう一度形を整えます。

28. 文字盤の埋め込み

 

着色が乾燥したら、文字盤にチークの丸棒を埋め込みます。写真に写っているのは便利ノコ。カッターナイフのボディに小さなノコ刃がついています。その名のとおりとっても便利な優れもの。細かい作業に大活躍してます。アマチュアの方や子供の工作にもお奨め。

 

29. 文字盤の面取り

 

埋め込んだチークの丸棒の面取りをします。

そのままだとカッコ悪いので。
謝って本体に傷をつけないように注意注意。

30. 木球のはめ込み

 

他12時、3時、6時、9時の場所には、文字盤が見やすいように、ちょっと大きめの木球をはめ込みます。
おっと、止まり木はダボで、クチバシは真鍮釘を芯にして瞬間接着剤で固定します。

 

31. 仕上げ塗装

 

塗装は、くるみ油やひまわり油など食用の乾性油をブレンドしたものを基本的に使用しています。

しっとりとした仕上がりになりますが、難点は乾燥が遅いこと。天気のいい日でも3~4日かかります。

でも、食用油なのでサラサラです。
そうそう、くるみ油のにおいでお腹が鳴るんですよね。

 

32. 部品の取り付け

 

ムーブメントや針の取り付けを行います。
針は、自作しています。これも結構大変。写真の針の材はハンノキです。

 

33. 完成

 

わーい。やっと出来上がりました!!
カワイイでしょ?
でもこのページを作るのに、本物の時計を作るのと同じくらい時間がかかってしまいました。
どっちも大変です。

 

こちらは無着色、お目めパッチリバージョン。材は琉球松です。

いやーお疲れ様でした。全部読んだ方、大変だったでしょう。

これでも、細かい工程を省いているんですよ。例えばサンディング。ひとつの写真で3工程くらいあります。


こんな風にふくろうを作っています。

機械や電動工具をフルに使ってますが、もちろん手道具だけでも出来ます。私も最初はそうでした。

でも、ジグソーとドリルはあったほうが簡単です。あとは丸ノミをフル回転で使います。

興味のある方は、どうぞ作ってみて下さい。